・・・・・ 今を生きる人が暮らしや地域を見つめ直すきっかけに。
倉敷美観地区は、倉敷の歴史・文化・芸術を象徴した観光地として全国にその名を馳せてきましたが、今の時代に果たすべき役割は、「暮らしの豊かさとは」を倉敷から発信することにあると考えます。経済の指標でしか豊かさを計ってこなかった消費社会の中では、どの家庭にもあった手仕事や地域コミュニティーは捨て去られ、どんどんパーソナルな単位の社会になってきました。今になって日本人は、捨て去ってきたものの大切さに気付き本当の豊かさを取り戻そうとしています。
倉敷の昔ながらの町並みが今日に続くのは、どの時代になっても世代が変っても暮らしの豊かさに対する価値観がぶれなかったからです。世代が時代を越えて暮らし繋いできたまち「倉敷」に学ぶことの意義は大きいのではないでしょうか。
民芸の精神が生きるまち「倉敷」において、生活具は暮らしの中で修繕されながら味や深みを増し、心をも宿してきました。この暮らしぶりは、昔ながらの狭く曲がりくねった通りに軒を連ねる町家もまた同様です。世代が変るごとに町家に手を入れ住み続け、また町家は世代をしっかりと繋げてきました。
倉敷美観地区は、決して一過性の観光地ではなく、今を生きる人が暮らしや地域を見つめ直すきっかけ、学ぶ場としてその「本質」を発信すべきだと考えます。日本全国津々浦々住むところが違おうと、世代や時代が変ろうと地域や暮らしの豊かさの「本質」は変わるものではなく、通じ合い共有できるものです。
このことを学ぶ場として2012年3月20日春分の日、倉敷生活デザインマーケット「林源十郎商店」はスタートしました。
木造三階建ての本館や母屋、離れ、蔵の四棟と庭を修復・整備した施設には「豊かな暮らし」を探求する「衣・食・住」の8店舗が入居。
「豊かな暮らしとは」をテーマに企画展やワークショップ、勉強会を行っています。
さらに地域の素材・技術力に新しい企画・デザインを加えた商品開発や販売を行っています。
・・・・・ 人の「気質」と、まちや暮らしの「本質」を学ぶ。
倉敷のまちづくり、今日に続く地域社会活動を行った倉敷の実業家・大原孫三郎。その大原孫三郎に多大な影響を与えたのが林源十郎です。キリスト教徒であった林源十郎は、「岡山孤児院」創設者の石井十次と大原孫三郎を引き合わせたことでも知られています。大原孫三郎は、石井十次や林源十郎の地域社会貢献・福祉の精神に触れながらまちづくりを実践しました。
「林源十郎商店」本館二階には「林源十郎商店記念室」があり、1657年からこの地で薬種業を営み、倉敷村の健康・福祉に尽力してきた林家・林源十郎商店のスピリッツに触れることができます。この林の精神を学び生かすためにも再生後の店名は、当時のまま「林源十郎商店」とさせてもらいました。このような先人の「気質」こそが、今日の倉敷のまちを育て豊かさのある暮らしに生かされています。
それを間近に感じられるのが、本館屋上からのまち並みです。先人たちが暮らし繋いできた倉敷村、倉敷美観地区・本町通り。その暮らしぶりこそが美しく、生活デザインそのものです。先祖や先人を敬い、地域や次世代・未来をおせっかいに思いやる精神「気質」を繋いできた倉敷。その暮らしの「本質」をぜひ屋上から体感下さい。敬い、思いやる心に触れると地域や家族との日々の暮らしがちょっと楽しみなるかもしれません。